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「ひとりきりの場所」

水を頂く都。
第二区画、柔らかな日差しと白亜の城壁、行き交う水路に囲まれて。
ポラリスはゆらゆらと揺れる空を眺めていた。

ああ、と声を出す。どんな意味も持たないそれは頭の奥の方に流れ、泡となって今いる世界から消えていく。

思えば色んなことがあった。肌寒い森、痩せた足の女の子、平たい帽子を被ったヒト族……
色んなことがあった――そんな心持ちで見上げる水面越しの空が、とても心地よかった。

同じ空が広く見える。昔もよくここに来てた。何もできなくて、居たたまれなくて、
誰かの視界にいてはいけないと思ったから、誰にも見つからないところを探して、

またひとつ、泡が水面へと消えていく。
また来よう。もっと空が見えるかもしれない。



視界の端に見える、今は見慣れた顔。
見知った顔。
「せせせ先輩?! どどどうしてこんな所にいるんですか?!」
「腹立つ顔しやがって。行くぞ」

先輩の背中。綺麗な石畳。ゆらゆらと揺れる空。
ひとりきりじゃない帰り道。
「にやけてんぞ、気持ち悪いな。」
「えっへ、そうですか?」

誰も知らない場所でなくなったことが、なんだか嬉しく思えたんだ。

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