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「城の窓」

その窓から見える景色には、親父の全てが詰まっていた。
突き出した石造りのバルコニー、整えられた庭園、近衛兵の詰所。
低すぎる城門、活気に溢れる大通り、海へと続く街道、船、船、船。
自分はまだ子供、それは弁えているつもりだ。

そうだとしても、この景色に指一本触れられないことは悔しかった。
思えば小さい頃、母親の庭を日がな荒らして回ったのは、この景色へのささやかな抵抗だったのかもしれない。

出てみたらいいじゃん。

そんな彼の最後の言葉が頭をよぎる。
正論だった。正論であるだけに、受け入れがたい言葉だった。しかし今まさに、その景色は変わっていった。

バルコニーから垂れ下がる寝具で作られたロープ。慌ただしく庭園を駆けていく兵たち。
飛び越えた城門の先には何事かと集まる臣民たち。ああ、火の手が上がった。
彼は港を目指すのだろうか。港の先には何があるのだろうか。

精々捕まえてみろ、ブリジッド、カルウィ、親父。
この日この時のために忍ばせておいた食料、そしてもっとも金目になりそうな剣を背負うと、
彼は空へと躍り出た。

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